光学屋さんのまめ知識レーザ光の人体への影響
はじめに
前回のスペシャルではレーザ機器利用環境下での安全対策について取り上げましたが、レーザ光が人体にあたった場合、どのような状態になるのでしょうか?
今回のスペシャルでは、レーザ光の生体組織への影響について取り上げてみます。
レーザ光による人体への障害
レーザ光が照射されると、波長やエネルギー密度、肌の色や水分量などにより程度は異なりますが生体組織での吸収が生じます。このとき、レーザの強さにより次の3種類の障害が発生します。
■光化学反応

熱作用を生じない程度の弱い光であっても、長時間照射されると障害を受ける場合があります。天気の良いスキー場などでサングラスをしていないと、目が痛くなることがありますが、これは反射した紫外線により角膜に障害(雪眼)が発生したためです。また、可視光(400~500nm)でも眼底の視細胞に吸収されると障害を生じる場合があります。紫外線の場合は日焼けや炎症なども発生します。
光化学反応の特長は照射後6~12時間で発生し、その間に受けた照射量が累積効果として作用することにあります。出力の低いレーザだからといっても、長時間照射を受ける場合には保護眼鏡等により保護してください。
■熱障害

金属をも切断したり溶接できるほどレーザ光はエネルギー密度を高めることができますので、熱障害は一番イメージしやすいと思います。
レーザ光が組織で吸収されると光エネルギーが熱エネルギーに変換され、温度上昇により組織構造が変化します。温度が低い場合はお灸のように生体を活性化させますが、高くなるにつれて、火傷、凝固、水分蒸発、炭化、燃焼、気化、蒸発と再生不能な変化となります。
変化の状態を適切に把握することで、レーザメスや網膜はく離の治療など、人体に有用な場合もありますが、不用意な照射は障害の要因となります。保護眼鏡による眼の保護はもちろんですが、肌の露出を最小限にするなどの対策が必要です。
■非熱的障害
パルスレーザの場合、ピークパワーが高くなると時間的・空間的に高いエネルギー密度が生じます。この結果空気の絶縁破壊が起こり、衝撃波となって照射部位や周辺組織を破壊する場合があります。これは角膜や水晶体など透明な組織でも生じることがあり、衝撃波の眼内伝播により照射部位と異なる場所で出血する場合もあります。
可視域のレーザが誤って眼に入射した場合、網膜下部の色素上皮層で吸収され、含有する水分が急激に膨張して衝撃波が発生し、その応力によって眼内の出血や裂孔形成(眼球に穴が開く)となることもあります。
参考資料:「レーザ安全ガイドブック第4版」
編集:(財)光産業技術振興協会、新技術コミュニケーションズ刊
参考
レーザ保護メガネ
レーザセーフティガイド1
レーザセーフティガイド2